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〜第13話〜
〜代償〜

ルドエリの街に着き、俺はまっしぐらに宿へ向かった…
「早くテリに会いたい…皆に会いたい…」そう思いながら…

宿に着くと、なぜか出入り口の前に人だかりが出来ている…
そこにはなぜか警察も来ていた…

狼「おぅ!フェアか」
その声の主は…俺が昔いた部署の同僚だった…

フ「どうした?なんかあったのか?」
狼「あったもなにも…殺人さ…被害者は…」
なぜか被害者の名前を出そうとはしなかった…なぜ?

フ「なんだ?言えよ」
狼「実はな…お前の所の者らしいな…『テリ』って名前だ」

嘘だろ…

狼「でな…お、おい!ちょっと待てよフェア!…」
俺は話の途中で部屋へ向かった…その言葉が信じられない…自分の目で確かめてやる

階段を駆け上がる途中…オーナーが事情聴取されているのが見えた…
しかし今はそれどころじゃない。テリの生死だけが心の中にあった

『バンッ!!』
勢い良くテリの部屋のドアを開けると…

そこは真っ赤な血の海と…ベッドに倒れている……テリの無惨な姿があった…

フ「お…おい…な…なんの冗談だよ…なぁ…テリ…おい!!」
身体を揺すってみたが…すでに息絶えていた…

フ「あ…お…おい…嘘だ…誰か!嘘だと言ってくれ!!なぁ…誰か…」
周りの人は何も言わない…ずっと俺の方を見ているだけだった…

フ「あ…あ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ
今の俺には叫び泣き崩れる事しか出来ない…この事実が…俺には耐えられない…

シ「フ…フェア」
俺の名前を呼び、肩に手を置く人がいた…
涙ながらに振り返ると…イルとシルが立っていた

フ「なぁ…一体…どうなってるんだ…なんでこんな事に…」

イ「僕ら…テリさんの部屋から大声がしたから…部屋に行ったんだ…」
シ「部屋に入った途端…他に誰か居て…オレたちを見ると『2人ともこっちに来るな!!今すぐここから逃げろ!急げ!早くしろ!!!』って…いつものテリさんじゃない…すごい剣幕で言ったんだけど…」
イ「でも…『誰か』に僕たち…攻撃されて……気がついたら…テリさんが…」
そういうとイルも泣き崩れてしまった…

2人から何が起こったのか事情を聞くが…2人が気絶してる間に殺されたのか?

心の中に…犯人に対しての怒りと憎しみが込み上げてきた…
フ「犯人の顔は見たの…か?」
2人はそろって首を横に振る

『ドカッ』
俺は怒りで拳を床にぶつけた…

俺はまた…大切な人を見殺しにしてしまった…

そう思った時だ…
昔…子供の頃…祖父から1度だけ聞いた『禁じられた力』

『その力』…今使うべきなんじゃないのか?

もう…こんな事で再び大切な人を失いたくない…

俺は立ち上がり…息の無いテリの元に立った…
テリに触れると…冷たい…なんでこんな事に…

フ「シル…イル…後は頼んだぞ…」

シ「えっ『頼む』って何!?…ちょっとフェアさん!?」
イ「フェアさん!一体何をするんですか!」

いくぞ…『ヒーリング』…

俺は全生命力をテリに向け発動した…
次第に全身の力が抜けてきた…目の前が…揺れる…

周りに止められても…このテリに向けた手は離さない…絶対に離すものか…

次第に…意識…が無く…なって…き…た…

気が付くと…俺は…きれいな草原の中にいた…
地面以外なにも無い…ただの草原に…

少し先にテリが居る…彼はその先にある吊り橋に向かい歩みを進めていた…

フ「おい!テリ!!待てよ!」

俺の声に気付いたのか、俺の方を見る…

テ「おう…どうした?」
フ「お前…一体何処に行くんだ?」

彼は何も言わず吊り橋の方を指差した…

フ「テリ…お前が行くのはその方向じゃない…逆だ…」
吊り橋の先に『何か』がある…しかしそれは良くない気がした

テ「いや…俺はあっち(吊り橋)の方へ向かわないといけない気がするんだ」

俺はテリの腕を掴んだ…
その時だった…テリの今まで思ってた事…彼の『全て』が俺に流れ込んで来た…

なぜイルと寝たのか…ライとの事…今までの人生が見えた…

フ「テリ…お前には…まだ…やらなきゃいけない事がたくさんあるだろっ…残された2人や今までお前と出会った人はどうなるんだ?」

テ「お前にもまだする事があるだろ?俺はもういいんだ…」

フ「俺には…テリが幸せになってくれれば…それでいい…俺の事はもういい…十分…いや、それ以上に幸せだった…ありがとう…もう戻れ…元の世界にな」

『チュッ』

俺はテリに『最後』のキスをし抱擁する…

すると…テリの身体が徐々に光に包まれてゆく…
俺がテリに微笑むと…テリも微笑み返し…消えた…

草原には俺一人…でも寂しさは全くない

俺は雲一つない空を見上げ

テリ…シル…イル…俺の分まで生きろ!そして俺よりもうんと幸せになれ!

そう呟き、吊り橋を渡った…

心の中には…皆がいる…そう思うと心強かった

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