〜第11話〜
〜Solitude〜
もう…クレが居なくなってしまってからどれ位経ったんだろう…
今の俺には…日付も時間も解らない…まるで魂の無い…ただの人形の様…ずっと踞っている
バイトも無断で休んでしまってる…どうせ行っても何も出来ないんだ…
ずっと自分を責め続けてるんだ…こんな状態でロクな仕事が出来る訳が無い
自分勝手な考えだけで無理矢理クレをこの世界に居させようとしていた…
クレの気持ちも考えず…見知らぬ世界で…たまたま来てしまった俺の部屋に閉じ込められていたんだんだから…寂しかっただろう…
そんな事ばかり考えている…もういやだ…
気が付くと外は暗くなっている…もう夜か…でも電気を付けたくない…クレと過ごしたこの部屋も見たくないんだ…
”ドンドン!!”
リ「コウ!開けてよ!おれだからぁ!リュウだって」
ドアを叩きながら、俺を呼ぶ声がする…リュウか…
なんとか気力を振り絞りドアを開ける…
リ「やっと開いた〜何回呼んだと思ってるの?てか、電気付ければ?」
”カチン”
暗さに目が慣れてた俺は、その明るさに目が眩む…
リ「てか…コウ、大丈夫なん?なんか窶れてない?」
コ「そうなんかな?ここ最近…殆ど食べてないからな…」
殆どゾンビになりつつある俺に…リュウは何かを持ってきた…
リ「はい!取り敢えず差し入れもって来たから!これ食べなよ」
中身は…ハンバーガー…?
コ「バイト帰りか?」
リ「まぁね…それでちょっと話しあってサ」
俺は差し入れを食べつつ話を聞く事にした…
リ「あのさ〜なんか、店長がコウが無断欠勤してる事…凄く怒ってたよ?」
食べ終えた俺にさらに話しかけていた…だが今の俺には仕事の事など頭に入らない…
頭の中は…『後悔』…ただそれだけが占領しているようだ…
ただ俺は機械みたいに遠くを見ながら相づちを打つ…
リ「ふぅ〜…なんか今のコウじゃ聞く耳持たないってカンジだね…うんまぁ、今日は帰るよ…ちゃんと話しするんだよ?」
コ「あぁ…わかった…」
リュウが帰り暫くして…俺はある場所に向かった…
車を走らせ…着いた場所はあの…クレと一緒に行った森林公園…
もちろんそこには誰も居なく…もちろんクレはここにも居ない…微かに期待していた俺が馬鹿だ…
暫く薄暗い公園内を歩く…そして、あの…2人で力の練習をした所で立ち止まった…
周りを見渡し…クレがペットボトルを乗せた外灯が見えた…
俺もその外灯に手を向け『力』を使う…何の能力かは自分でも意識してないので解らない…『なにか』を決めて発動しようとしていなかった…
次の瞬間…
”ドォン!ガッシャーーーン”
外灯は今まで聞いた事の無い音を立てて爆発した…
コ「なぁ…なんで…こう…なちゃったんだろうな…クレ…」
発動した自分の手を見ながら…そう呟いていたんだ…
そしてその場所に寝転がった…丁度以前倒れた場所と同じ場所に…
もう目の前には俺を見守っているクレの姿は無い…
あるのは満天の星空だけ…あの中にクレが暮らしてる惑星があるのかな?
コ「クレ…もう1度でいいから…逢いたいよ…」
目から再び一筋の涙がこぼれ落ちた…
もう泣きつかれて…涙なんか出ないと思ってたのにな…
……どれ位…時間が経ったんだろう…夜空が次第に明るくなってきた…
そろそろ…帰るか…これ以上ここに居るとなおさら辛くなる…
そして、帰りの車の中…
また…クレの事を思い出してしまった…
コ「そういえば…帰り道でクレが車酔いしたっけ…」
ボーっとそんな事ばかり考えていた矢先…
”キィィィィ!!!!!!ガッシャーーーーーーーン”
次に気が付くと…車は…ガードレールに刺さってた…
あとちょっとで崖下に落ちる寸前の所で俺は助かっていた…
コ「俺は…生きてるのか?…」
「このまま崖に落ちて死ねば…楽になれたのかな?」
一瞬そういう考えが頭をよぎったが…すぐにそんな考えなんて振り払った…
また…時間が過ぎていったらしい…通りがかった車が止まり…俺の方へ近づいてきた
「お…おい!君!大丈夫か!?け…警察…今呼ぶから!!しっかりしろよ!」
暫くして警察と救急車が来た…車から降ろされたが、体はどこも痛くない…痛みを感じないみたい…
「どこかケガしてるか分らないから、取り敢えず病院に行きましょうか」
救急隊員の言われるまま…近くの病院まで運ばれ検査を受けた…
朝まで検査された…結果を待つ間その院内で休ませてもらったが…結果はどこも異常無かった…
警察に事情を聞かれ…その後、車が運ばれた先に行ってみた…これはどう見ても廃車だ…直しようが無い…
コ「もし…これが…『彼』だったら…直せたのかな?」
そう呟いてみても『彼』はもう居ないんだ…なんでそういう事を考えてしまうんだろう…
そしてやっとの思いで家に着く…俺は一気に倒れ込み、すぐに眠ってしまった…
暫く眠り、起きて何気なく携帯を見てみた…『着信あり』
バイト先からだ…履歴を見ると…ずっと溜まっていた未着信履歴…殆どバイトから…
留守番電話に「え〜ちょっと話しがあるので、すぐにお店まで来てください」と最後の着信分のメッセージが残っていた…
これは…行くしか無いのかな?
バイト先に着くと…俺を見つけたのか社員がこっちに向かってきた…
そして事務所に来る様に言われ、後をついていった…
事務所に入ると俺は事故の事情を話した…が、次に社員が放った言葉に一瞬耳を疑った…
「この数ヶ月の間、ポンポン休まれたりしてるでしょ? 遊び半分でウチで働いてもらっちゃハッキリ言って困るんだ。それに…この数日、君が無断欠勤してるのを店長や俺ら社員、そしてマネージャーの全員で話し合ったんだけど、そこで出た結果ってのが…長木君には辞めてもらうって事なんだ。君には悪いけど…自分の蒔いた種なんだから………」
つまり…クビ…俺は解雇された…これだけ迷惑かけたんだから…仕方ないよな…
とりあえず挨拶を済ませ、独り…家に戻る…秋風がいつもより寒く感じる…
翌日…
目の前には全ての事情を知ったリュウと、その目の前に俺が座っている…
コ「なぁ…俺は…どうすればいいんだろう…『このまま死んでもいい』って…思ってるんだ…」
”バシッ”
今まで人に手を挙げた事の無いリュウが…俺をの頬を叩いた…
痛みよりもその行動に俺は驚いてしまっている
リ「『死ぬ』なんて言うなよ!コウが死んだら…今までのクレとの思い出も…おれとの事もサイトの事、全て無くなるんだよ!?そりゃぁ『好きになった人が去った』っていう事が辛いのは分るよ?でもね…」
今まで俺に対して本気で怒った事の無いリュウが…今、本気で怒っている…
だが『でもね…』自分を取り戻したのか、いつものリュウに落着いた…
リ「でもね?たとえ…今は本当に辛くても、いつかそのつらさを乗り越えられる日がくるんだよ?まぁ、乗り越えられそうになかったらサ、自分のホントの気持ちを全部出してみな?そうすれば何か分るんじゃない?」
そういい残すと、リュウは部屋から出て行ってしまった…
いつもチャラチャラしてるヤツだけど…いざって時は本当、助かる…
いい友達を持ったな…俺も…
コ「ふぅー……『ホントの気持ち』…か…」
俺の中で何かが吹っ切れた…
『好き』に種族も性別も関係ないんだ…相手の事を愛してるならそれでいいじゃないか
例えその先に『壁』があっても、俺は立ち向かうぞ…絶対に…
その時…
俺は自分が授かった『能力』を、めいっぱい出してみる事と決めた…
クレに「死ぬかもしれないよ?」と言われたが…今はそうは思えない
ただ…心の中で
『クレに逢いたい…』
それだけを強く願っている
そして…『自分の心と素直に向き合うんだ…』そう決意した…