〜第8話〜
〜Control〜

仕事中…

あぁ…お客来なくてヒマだなぁ〜時計を見ると…帰れるまであと1時間か
マ「じゃぁ暇だから長木君さ〜『倉庫整理』やってきてよ」

『倉庫整理』…
この夏の暑い中、換気扇1箇所しか付いてない所で重い段ボール持って片付けかよ!
ぶっちゃけ、この時期の倉庫の中ってまるでサウナ状態なんだよな…

「ヤダ」って言える訳も無く倉庫へ…

ドアを開けた瞬間”ムワッ”とした室内に籠った熱気がこっちの方に漂ってきた

中に入りしばらくすると…全身から汗が吹き出してくる(;:; ̄□ ̄;:;)

コ「面倒くせーなぁ……そーだ!」
俺は覚えたばかりの『浮遊』を使って片付けを済まそうと考えた
最初に発動してから殆ど力を使ってないし、クレから何も教えてもらっていない…

コ「よっ と」
手の向けた先にある玩具の入っている段ボールが浮き
30cm…1m…と徐々に高さを増してきた

ちょうど2mくらいの高さに達した時だった

”ヒュー…ドサッッッ!!!”
凄い音とともに浮いてた段ボールが床に落ちてしまった…

マ「おい!どうした!?」
大きな音に気付いたマネージャーが倉庫にやってくる

コ「棚から段ボールを落としちゃっただけですから」
マ「な〜んだ…気をつけてくれよ?てっきり梯子から落ちたかと思ったよ」
そう言い残すとマネージャーは倉庫から去って行ってしまった…手伝えよ!

でも、集中してた筈なのに…なんで落ちたんだろう…

1時間後…

手作業で、なんとか綺麗に倉庫中を片付けた…気がつくと丁度帰りの時間になってる…
マネージャーの「帰って良いよ」コール(?)を聞くと速攻で帰る支度をした

外が暗い中、家に到着…

ク「おかえりー」
コ「ただいま」

制服から部屋着に着替えを済ませ、ちょっとクレに『お願いごと』をした

コ「あのさーちょっとお願いがあるんだけどー…良いかな?」
ク「え?何?僕に出来る事なら…」

コ「えーと…力のコントロールの仕方を教えてほしいんだけど」

暫くクレは悩んで頷いた
ク「うん!いいよ。でもここじゃ狭いね」
確かに部屋の中には物が多く、なにか壊れたら困るしな…

コ「じゃあ、外に行こうか!」

2人で車に乗り込み、人気の無い山にある寂れた森林公園にやってきた

車内では『この前』の出来事(*第3話参照)のせいか、クレは少し落着かない様子だった
今回は飛ばす気は全く無いんだけどなぁ…

森林公園に到着!やっぱり公園には誰もいない…
あるのは寂しく付いている外灯と錆びた遊具だけ…
駐車場には俺の車只1台だけ…時々来るけど…相変わらず寂しいな

コ「それでは『先生』宜しくお願いしまーす」
ク「先生ってそんな…」
まんざらじゃないような態度で俺たちは近くのベンチに向かった

そのとき、クレは捨ててあったペットボトルの中に、水飲み場から水を入れてきた

”ドカッ”
彼はおもむろにそのボトルをベンチに置く

ク「じゃぁ…まず、コウがよくやってる『浮遊』からなんだけど、
いつも見てると、なんか力の事を意識しすぎてない?」
コ「まぁこの力が出た時以来、『ラクしたい』とか思った事はなんかいもあるけど…」
他にも言えない事もいっぱい有るし…

ク「僕たちって、普段あまり意識してないんだよ〜
まぁ、普通に手とかみたいなもんだと思ってる人が多いんだよねぇ
ただ…『一部の人達』はそういうのを意識して力を使ってるけど…」
クレの言葉の『一部の人達』ってのは気になったけど
たしかに意識しなければいいだけの事なんだよな…

ク「あと、いざ力が必要な時は…こー…逆に意識して心の中から発動する…って上手く言えないんだけど」

上手く文章になってないけど、何となく感じとしては分かった…気がする…

ク「まぁ…実際にやってみよっか!先に僕がやってみるから、コウもその後やってね」
そういうと、さっきのペットボトルの方に手を向け力を発動した

すると、ペットボトルはフワフワと浮き俺たちよりも高く浮いていった
5m…6m…どんどん高度を増して近くにあった外灯の上にチョコンと乗せた…すごい
さらにそれを、色んな所にグルグルと飛ばしてる…(唖然)

しばらく飛ばした後、再びペットボトルを元々あったベンチに『置いた』

ク「じゃぁコウ、こんな感じにやってみて!取り敢えず最初の方だけね」
『こんな感じ』ってカンタンに言うけど…難易度はかなり高そうだぞ?

少しだけ精神統一してクレみたいに力を使ってみた…
ボトルは少しだけ浮いた…が、ほんの1〜2mくらい浮いて再び地面に『落ちた』

ク「まぁ、最初はこんなもんだよ。僕も最初かなり苦労したし。でも、自分なりの『コツ』をつかんだら楽に出来たよ」
『コツ』…それを掴むまで苦労しそうだな

30分後…

最初の頃よりは大分コントロール出来る様になってきた!
少しずつだけど、高度も増してきたし

ク「さっきより良いよ♪もしかしたら僕の時より早いかも…(笑)」

たとえ失敗してもクレは励ましてくれるし…上手くいけば、ちゃんと褒めてくれるのが嬉しいナ

1時間後…

ようやく!最初言われた通り、外灯にペットボトルを置く事が出来た!

ク「おぉ〜おめでと〜!!!じゃぁ、次の段階に行こうか♪」
次は…『落とさないで飛ばす』だったナ…これまた難しいな…

そう思った時だった…急に全身に妙な感覚に陥った…
なんていうか…力が全く入らない!
そう思った瞬間!

”ガクッ…ドサッ”

俺は急に跪き…そして地面に倒れ込んでしまった!
起き上がろうとしても…体中力が入らないから起き上がれない

ク「コ…コウ大丈夫!!?もしかして…もう『アレ』がきたのかな…!?」
コ「な…なに…『アレ』って…」
力は入らなかったが、なんとか喋る事は出来た…

ク「コレは僕たちにもある事なんだけど…『能力』を使いすぎると脱力して倒れてしまうんだ…
コウは僕よりも力の『容量』が小さいみたいだから『過疲労』が早いんだね…僕、その事をすっかり忘れてたよ…ゴメンね」

オイオイ…そんな大事な事…忘れるなよ…

後で知った事だけど、『容量』は体格に比例してるみたい…
俺より身体のデカいクレは、その分たくさん能力を使えるそうな…
『過疲労』を起こすと体は休もうとして眠くなって来るらしいけど、今の所そんな気配はない

で、しばらくベンチで休むと徐々に回復してきて、フラフラしながらも辛うじて立つ事は出来た
でも、ちょっと『力(能力)』を使うまでには回復してないカナ

ク「今日はもう帰ろうっか、ホント…ゴメンネ」
コ「ううん…もういいよ…気にしてないから」

なんとか車に乗り込み、やっとの思いで無事に家まで運転して帰れた…
家に入った瞬間…玄関先で俺は猛烈な眠気に襲われ、そのまま倒れる様に眠ってしまった

次に気がついた時には、クレが横で眠っていた…
どうやら玄関から俺をおぶって自分の寝床まで運んで来たらしい…

コ「今日は色々ありがとうね…クレ…

”チュッ”

眠っているクレにお礼を囁き、軽くクレの口にキスをして俺は再び眠りについた…
なんか…久々にクレの横で眠った気がする…すごくあったかくて気持ちいいや

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