あれから幾日も経った庄六の長屋。
 長屋の小さな窓から見える月を眺め、静かに座る庄六。
「はあ……」
 時折ちいさな溜め息を漏らし、再び月を見上げる。その繰り返し。
「あの方に逢いたい……樋浦様……」
 その小さな瞳には涙が滲む。

 脳裏に浮かぶ、あの帰り際。 ぎゅっと抱き寄せられた時に鼻腔をくすぐった彼の匂い。
 その口づけや匂いを思い出すに庄六の股間が熱くなる。
「はあん……」
 褌越しに己の棒を撫で回し、その刺激に耐えられずにゆっくりと吐息を漏らす。
「ひ……樋浦……様……お、おら……」
 茶色の毛に覆われた太い身体をひねりながら、空いた手で己の弱い部分を撫で回す。
「も……もっと……お願い……します……ああ!」
 褌の横から充血し太くなった己の肉棒。 その先端からは透明な液が湧き水の様に溢れ出していた。
 微かに聞こえる濡れた音と布が擦れる音。
 ゆっくりと自分自身の透明な液で濡れた棒を上下に擦る。
 初めはゆっくりと動かしていた手が、時が過ぎるごとに激しさを増しはじめる。
「あん……ひ……うら……さま……オラ……もう……」
 僅かに空いた口から涎を垂らし、それに気付かず一心不乱に肉棒を擦り上げる。
「んあああ!! い……いくっ」
 やがて、庄六を包む快感は頂点を迎え、彼の肉棒の先から白濁液が源泉の様に吹き出す。
「ああ……樋浦様……」
 身体中の力が抜け、庄六はその場に大の字で寝転がる。
 窓から見える光景は、星空から朝焼けの空に変わっていた。
「違う……樋浦様への気持ちは性交したいだけの気持ちじゃないんだ……」

「今日も来たのかい。毎日来てますね、旦那」
 店の隅で簡単な肴に飲んでいた朋之に店主が声をかける。
「大将、この前の人、最近来てるかい?」
 店主に背を向け、猪口の酒を少しずつ喉に流し込む。
「そういえば……奴(やっこ)さん、この前の一件から全然顔見ないねえ」
 店主の言葉に小さく「そうか」と呟くと、再び猪口に口をつけ夜が更ける。

 日が昇り、庄六は畑仕事に勤しんでいる。
「おーい! 庄六ー!」
 遠くの方から猫族の男が声をかけながら手招きをしていた。
「庄六、最近元気ないけど、何かあったの?」
 畑の端に座り込み、猫族の男が持ってきたおにぎりを口に運ぶ。
「そ、そんな事ないよ」
「いや、最近の庄六は何時もと様子が違う。なにがあった?」
 しつこい問いに庄六は短く溜め息をつくと
「好きな方が出来たけど、その方はオラにとって遠い存在なんだ」
 朋之の事はあまり話さず、大まかな流れと気持ちだけ短く話した。
「お互いに気があるなら、細かい事は気にしない方で自分の心のままに動いた方がいいと思うよ」
 猫族の男は微笑みながら立ち上がると、庄六の肩に軽く手を乗せ何処かへ走って行った。
「心のままに……ねえ……」

 翌日の夕刻、庄六は樋浦邸の前をうろついていた。
 立派な大名屋敷の門前には、立派な日本刀を脇に差した数人の男が立っている。
「あ、あの、樋浦様はいらっしゃいますか?」
 庄六は恐る恐る門番に声をかけた。
「なんだお前は! お前みたいな薄汚い奴に言う筋合いは無いわ!」
 門番の男の怒鳴り声に庄六は震え上がり、急いでその場を後にした。
 そして日が暮れた頃……。
「ここなら大丈夫かも」
 庄六は裏口から少し離れた樋浦邸の塀を、肩幅くらいしかない細い路地から見上げていた。
 塀の向こうには人の気配はしなかった。
「よっと」
 隣家の塀と樋浦邸の壁をうまく使い重い体をなんとか塀の上まで持ち上げた。
 庄六はその体に似合わぬ軽やかな動きで、樋浦邸の敷地内に入り込む。 その瞬間。
「貴様! 何奴!」
 丁度その場に回ってきた雇われ武士が、大声をあげ腰元の刀を抜き取る。
「あ、いや……オラは……」
「さては貴様、最近この近辺で盗みを働いている輩の一味だな!」
 武士の声を聞きつけ、慌てふためく庄六を何人かの武士が囲み取り押さえた。

「何の騒ぎだ」
 暫くすると、外の騒ぎが耳に入ったのか、白絹の寝間着のまま障子戸を開けた朋之。
 目の前を急いで通うろうとした一人の武士を呼び止め、何があったのか問う。
「数刻程前に盗人らしき男が、裏の塀から敷地内に入ったので我々で捕らえ、直ぐに同心へ引き渡しました。今頃は北町奉行所でしょう」
 武士の言葉を聞き「ご苦労」とだけ返し、厭な胸騒ぎを抱きながら再び寝床に戻った。



「早く入れ!」
 半ば無理矢理に東町奉行所の地下牢に入れられた庄六。
「本当にオラは何も盗ろうとしていません!! ただ、あの屋敷の主に逢いたかっただけなのです!」
 庄六がそう言った瞬間、彼の目の前に一本の槍を突きつけられる。
「黙って大人しくしておれ。夜が明けたら直ぐに拷問にでもかけて全て話してもらう」
 言う事だけ言うと、牢番は怪しい笑みを浮かべながら何処かへ去って行った。
「お前、いつまでそこに居る」
 庄六の後ろ奥から低い声が聞こえた。驚き振り返ると、牢の奥には幾つもの人影が蠢いている。
「新入りか。早く此処に来い」
 一つの影が庄六の方へ寄り、彼の腕を掴んだ。
「ひぃっ!」
 小さな悲鳴に影は驚きもせず、庄六を奥の暗闇に引き摺り込む。
 奥に行くにつれ庄六を引っ張る手の数が増えてゆく。
 一番奥に座っていた低い声を持つ主がのそっと立ち上がり、庄六の身体中を触り手持ちを確認する。
「コイツ、鐚一文も持ってねぇな……ちっ」
 男は小さく舌打ちし、目が暗闇に慣れてきた庄六の周りを見る。
 どうやら二畳半牢には五人の男がいる様子だ。
「それにしてもコイツ……良い肉付きしてやがる」
 低い声の男……恐らく庄六と同じ熊族の男。
 しかし庄六よりも遥かに大きい体つきをした男は、彼の毛に覆われた胸をゆっくりと揉みはじめる。
「やっ……」
 誰とも体を重ねた事が無い庄六にとって、他人に自分の敏感な部分を初めて触られ、思わず妙な声を出した。
 男は怪訝そうな様子で動かしていた指先を、庄六の小さな胸の突起に動かす。
 触れた瞬間、彼の体がピクンとはねる。
「お? なんだ、コイツ感じてるのか?」
 男の言葉に庄六は必死に首を横に振るが、体は正直に反応する。
「ほう……お前ら、こいつが着ている物を取れ」
 周りの男共がその一声で庄六が着ていた服を全て剥ぎ取った。
「や……止めてください!」
「金品持ってねえ以上、ここの『宿代』はお前自身の体で払ってもらう。それがこの牢の掟だ」
 熊族の男はベロリと舌を舐め回し、小声で「噛んだら殺すからな」と庄六を低い声で脅し、彼の唇を塞いだ。
「んんんっ!!」
 抵抗を試みるが、唇を塞いだと同時に周りの男共が庄六の手足を押さえつける。
 野良仕事で筋力がついている筈の庄六の体は、物凄い力で押さえつけられ一寸たりとも体を動かせない。
 同時に庄六の口内に男の臭い息と長い舌が侵入し、無理矢理彼の舌に絡みつく。
「ん……やっ……め……」
 唇の隙間から辛うじて拒否の声を出す。しかしその声は男に届かない。
「諦めろ新入り。ここじゃあ逃げすら出来ねえよ」
 右腕を押さえていた男が庄六に声をかけた。
 暫くすると、庄六は観念したかの様に全身の力を抜けた。
「分かってるじゃねえか」
 熊族の男は体を押さえつけていた男共を退かせ、庄六の長い毛で覆われた胸に吸い付く。
「ああっ!!」
 初めて胸を吸われ舐められる感覚に体を反らす。

 男はゆっくりと舌で彼の体を嬲りまわし、庄六が唯一身につけていた褌を破り捨てる。
 そこには充血し先端から透明な液が止めどなく溢れ出る庄六の肉棒が立っていた。
「接吻だけでこんなになるとはな……」
 肉棒の先端を指でなぞり、舌の先端で軽く舐めたのち、一気に根元まで咥えこむ。
「ひい……んんんっ!!」
 初めて味わう肉棒からの刺激に両手足をばたつかせる。
「お前ら! 新入りの手足を縛れ」
 一旦庄六自身から口を放し、周りで羨ましそうに見ていた男共に一声かけた。
 男共は素早く、どこからか持ってきた縄で庄六の両腕を後ろ手に縛りつける。
「やっ……やめてくださいっ!!」
「おい、誰かコイツの口を塞げ! 何で塞ごうと構わん! 五月蝿くて耳が痛え!」
 庄六の目の前にガタイが良い猪族の男が座り込み、彼のはち切れんばかりの一物を庄六の口に半ば無理矢理押し込んだ。
 「おお……良い……」
 とろけた目つきの猪族を尻目に、熊族の男は庄六の両足を持ち上げ、誰にも見せた事が無いであろう庄六の大事な部分に己のマズルを埋め、舐め回す。
 甲高い呻き声を上げながら顔を横に振ろうとするが、猪族の男に頭を押さえられ何もできない。
「おい、そこの!」
 熊族の男は牢の隅で布越しに己の肉棒を弄んでいた犬族の男に声をかける。
「俺のをしっかり濡らしておけ! どうやらこの新入り、初物の様だな」
 犬族の男は尻尾を振りながら、熊族の男の大きな一物にむしゃぶりつき一心不乱に舐め回す。

「もういいだろう……」
 暫くして出たその言葉に、犬族の男は直ぐに彼の張り裂けんばかりに太く成長した肉棒から口を離した。
「新入り、痛くして欲しくなければ力抜けよ?」
 熊族の男はそう言うと庄六の秘門に硬い肉棒を押しつけ、ゆっくりと中に侵入させる。
「んんあああああ!!」
 庄六の悲鳴を尻目に男は半分挿れた状態で一旦止まる。
「ふんっ!」
 そして一気に肉棒を庄六の中に根元まで押し込んだ。
「あがっ……くっ……痛っ……やめっ……」
「お前ら、適当に遊んでていいぞ」
 熊族の男の一声で何もしていなかった虎族の男と猫族の男が、庄六の胸をざらついた舌で舐め回す。
 そして男は庄六を激しく突き上げ、己の欲望の全てを庄六の尻穴にぶつける。

 口を猪族の男の肉棒で塞がれ、両手を縛られ、全身を舐められ、無理矢理尻を犯されている庄六には、抵抗できずに涙を流す事しかできなかった。
"樋浦様…申し訳ありません"
 涙を流しながらも、庄六は心の中で何度も何度も朋之に謝り続ける。
「おおお! イくぞ!」
 庄六が考えている事を知らない熊族の男は、彼の尻の奥で何度も果てる。
「おいお前、替われ」
 ずっと庄六の口を犯し続けていた猪族の男に声をかけると、彼の秘部から一気に己の肉棒を抜き取った。
 抜き取ると同時に、庄六の中から熊族の男の精液がどろりと溢れ、黒い毛に覆われた尻を伝い、床に落ちる。
 熊族の男自身は何度も達したのに、未だに硬さを保っていた。
「後はいつもの様にやってろ。俺は寝る」

 熊族の男が奥で大イビキをかいて寝ている間も、庄六は四人が満足して眠るまで交互に犯されていた。
 全身五人の精液や体液にまみれ、解放された頃には空が白んでいた。