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「マスター! お酒おかわり!」
 賑やかな大衆居酒屋に若々しい声が響く。
「おいおい、今日はやけに飲むじゃないか。少し落ち着いたらどうだ?」
 声があがったテーブルから近いカウンター。そこでグラスを洗っていた牛族の親父が心配そうに声をかける。
「いいんだよ。今日は飲ませてよ」
 白い斑点模様が入った黒い耳を力なく寝かせ、酒によって骨抜きにされた手で空いたグラスを牛族の男の方に渡そうとしていた。
「でもこの量は飲み過ぎなんじゃないか?」
 彼が座っているテーブルに無数に転がる空いたグラスや床に転がっているボトルに視線を落とす。
「マスターすまない。すぐに連れて帰るから……おい、帰るぞ」
 隣のテーブルに座っていた狼族の男が立ち上がり、アルコールと黒い縞模様に包まれている男の腕を持ち上げた。
「や、やだ! まだ飲む!」
 視線も定まらず、呂律の回らない口でこれでもかと言うくらいに酒を要求している。
 出会った頃から何を考えているのか分からなかった。今日は余計彼が考えている事が分からない。
「フェア、手伝おうか?」
 狼族の男と席を共にしていた体の大きい熊族の男が側にやってきた。
 天井に届かんとする背丈の男は、賑やかな居酒屋で否が応でも周りの視線を集めてしまう。
「仕方ない……頼む。ただし前みたいに馬鹿力でやるなよ?」
「おうよ! 任せておけ!」
 男の言葉に今日一番の笑顔で答え、腕をぶんぶんと振り回す。
「よっと!」
 振り下ろされた先……この酔っぱらいの体に鈍い衝撃を与える。
「ぐっ……う」
 力を完全に抜け、だらりと床へ倒れ込む。
「テリ、お前は力の加減と言うものが……まあいい。帰るぞ」
「了解大将!」
 鼻歌まじりに倒れた男を軽く抱え上げ、共に居酒屋を後にする。

「あ、おかえりなさい。随分遅かった……ああ」
 宿屋で一人で本を読んでいた馬族の男が三人の帰宅に気づき声をかける。
「ああ、ただいま」
 縞柄の彼が鱈腹飲み食いした分を支払い、少し涼しくなった財布をベッドの上に放り投げる。
「また……飲み過ぎたんですか。シルは」
 半ばうなされている……シルと呼ばれた彼の頭に濡れタオルを置き、
「まあな。いつも通りと言えばいつも通りなのだが」
 私はシルの愚行に頭を悩ませながら服を脱ぎ、浴室に入る。
「なあフェア、一緒に入るか?」
 先ほど以上の笑みを浮かべ、テリはいそいそと服を脱ぎだす。
 脂肪の乗った茶色い腹がぶよんと露になる。
「お前と一緒に入ると、ゆっくり風呂にも浸かれないからお断りだ」
 一人でさえ狭い宿屋の浴室に、テリのような大男と二人で入る状況は考えるまでもない。
「冷たい事言うなよ……いいだろ? な?」
「断る。たまの風呂くらい広く使いたいんだ」
 そう言い残し、私はばたんと浴室の扉を閉めた。

 夜が明けた。
「頭が……うーん」
 誰もが予想していたと言うか……いつも通りシルは二日酔いに悩まされていた。
 自慢の牙を剥き出しにし、ベッドの上で頭を抱えている。
「飲み過ぎだ。毎度馬鹿みたいにガブガブ飲みやがって」
 いくら言おうが、彼は唸り声をあげながら頭をかかえていた。
「まあ、それ以外の原因もある訳だがな」
 私はテリをちらりと見ると、彼は何も無かったかのように振る舞い、視線を泳がせている。
「シル、これ嗅いで」
 少しの間見なかった馬族の男が二つの小さなボトルをシルに渡した。
 中には液体らしき物が詰まっている。
「こっちは匂いを嗅ぐとアルコールの分解が少し早くなる芳香草のエキスで、こっちは飲み物ね」
「あ、ありがとうライ……うーん」
 芳香草エキスが入っていると言うボトルの蓋を開けると、部屋中に甘ったるい香りが充満しはじめる。
「うわあ……俺はこの匂い駄目だ。少し散歩でもしてくるわ」
 テリはそう言い残すと、まるで逃げ出すように部屋から出て行く。
「シル、今日は寝ていろ。ライは一緒に来れるか?」
 肌に吸い付いているかのような服の上に、近くのソファーに置いてある上着を手に取り羽織る。
「はい。準備はできています」
 私も近くに掛けておいた裾の短い服を羽織り、既に腰に巻き付けているベルトに短剣を左右に二本差す。
「では……行くか」
 ライの後を追うように二人で部屋を出ていく。
「あ、そうだ」
 私は一つ思い出し、ベッドの上で芳香草を嗅いでいるシルを見る。
「シル、今日は休んでいていいが……夕食は減らさせてもらうからな」
「えー! そんなあ……」
 私に言葉に耳をぴくりと反応させ、こちらを見て瞳を徐々に潤ませる。
「えー! そ、そんなあ……」
 自分の飲み過ぎが理由で二日酔いになった上、一日中猫族のようにゴロゴロしている彼に少し罰を与えようと思う。
 まあ……言ったところで結果は大体見当はつくが。

 昼間の用事や仕事を終え、暗い中宿に戻るとシルは朝とは打って変わってすっかり元気になっていた。
 本業の仕事の依頼は雀の涙程しかなく、殆ど私たちが泊まっている宿のオーナーに頼まれた食料の調達をしていたようなものだったが。
 途中でどこかへ行ったテリも、私たちに少し遅れて部屋に入ってきた。
「お、全員いるのか。ちょうどいい」
 そう言いながら手に持っていた袋の中から一本の瓶を取り出す。
「何だそれは」
「酒だ。散歩していたら昔の知り合いに会ってな。これが……」
 テリの曇りのない笑顔に私とライは頭を抱える。
「あ、オレは遠慮しておきます……昨日の今日で同じ失敗はしたくないんで」
 珍しい事もあるものだ。シルが自ら好きな酒を断るなんて。
「自分も……その、すみません」
 ライが酒を飲まないのは昔からだ。昨日の居酒屋に来ずに部屋で本を読んでいたのもそのせいだ。
「仕方ねえな……なあフェア、どうする? この酒」
 テリは行き場を探すように酒瓶をふらふらと持っている。
「どこかに置いておいて機会があれば飲むか」
 そんな事を話していると、部屋の外から鈴の音が聞こえてきた。夕食の時間らしい。
「じゃあ……行くか」
 今日の夕食は珍しく豪華だった。私とライが昼間手伝ったせいだろうか。
 量を減らされ少し元気の無いシルに、隣に座っていたライが耳打ちする。
「ひとつだけ食べる?」
 耳打ちしながら手元にあったおかずを一皿、シルの前へ置く。
「あ、ありがとう」
 ちらりと私の方を見たような気がしたが、大して気にも止めずに料理を口に運ぶ。
 そして食事を終えると、私達は再び部屋へ戻る。
 各々がアルコールの入っていない飲み物を片手に談笑し、そのうち夜が更ける。
「そろそろ寝るか。灯り消すぞ」
 ベッドに潜り込むと既にテリはいびきをかき始めていた。
「今日は静かですね……いつものいびきの五月蝿さにくらべれば」
 少しでも酒が入ると耳障りなくらい大きないびきをかき、三人の睡眠を邪魔している。
「そうだな……おやすみ」
 枕元に置いていたランプの灯を落とし眠りにつく。

 どれくらい眠っていただろうか。私の体を誰かが揺らしている気がした。
 目を開け、暗い中周りを見る。
「よう」
 暗闇の中からテリの声が小さく聞こえた。
「こんな夜中に……なんだ?」
 少しずつ目が闇に慣れ、テリの姿も薄らと分かってきた。
「す、すまん。少しお前だけに話があるんだが……今から外に出れないか?」
「明日……昼間に時間を作って外で話す……では駄目なのか?」
 まだ私自身の頭も起きていない。普通の事であれば昼間でもいい筈だ。
「昼間はちょっと……出来れば今がいい」
「分かった。服を着たいから少し待ってくれないか?」
 流石にこの格好……下着一枚で外に出る訳にはいかないだろう。
 薄手の服を纏い、二人で静かに外へ出た。
 夜空に浮かぶ二つの月。そして少しひんやりとした夜風が被毛をくすぐる。
「ついて来い」
 半ば無理矢理テリが腕を掴む。馬鹿みたいな力に引っ張られ、眠りに入ろうとしている街を風のように駆け抜ける。
 そして気がつけば人のいない森まで連れてこられた。
「それで、なんだ? 話って」
「あ、ああ……実はだな」
 私に背を向け、いつもの彼からは考えられないくらい煮え切らない態度をとる。
「用がないなら私は帰るぞ」
 腹立たしかった。眠りを邪魔されたのもあるが、こんな昼間ですら人が通らないような場所まで連れて来てもはっきりしない態度を取るテリに。
「ま、待ってくれ!」
 宿へ帰ろうと一歩踏み出そうとした瞬間、振り向いた彼が私の腕を掴む。
「わ、分かった。待った。とりあえず……これでもどうだ?」
 どこから出したのだろう。夕飯前に出した酒瓶のようだ。
「こ……この為に呼んだのか?」
「そう言う訳ではないんだが……ションベンしに起きた時に外を見たら、今日はいい月が出ているのが見えたからな……二人で飲まないかと思ってな? どこを探しても見つからないくらい貴重で旨いんだ」
 そう言いながら背後からガラス製のコップを二個取り出し、そのうち一個を私に渡す。
「こぼすなよ?」
 普段は力任せの彼が、いつになく繊細に酒をコップに注ぎ込む。
 コップに注ぎ込まれた酒を澄んだ夜空に浮かぶ月明かりに透かすと、透き通った不思議な色を放つ。
「綺麗だな」
 先ほどまで沸き上がっていた腹立たしさはどこへやら。ゆっくりと器を揺らしながら中の液体に見入ってしまう。
「味も見てくれよ」
 いつもとは違う……いつものテリではないような彼に言われるが侭、コップの淵に口を付け液体をゆっくりと流し込む。
「うお……これは」
 いつも飲んでいる胸を焼くような攻撃的なアルコールは影を潜め、鼻腔に優しくもあり力強さも感じられる香りが抜ける。
 一口注ぎ込むたびに体の奥底から幸福感が溢れ出るような味だった。
「旨いだろ。熊族の一部にしか伝えられていない秘酒らしい」
 ガタイの良さから力仕事を主とする熊族に、こんな繊細で不思議な味の酒が作られるとは思ってもいなかった。
 二人で岩場に腰をかけ月夜を眺めながらゆっくりと酒を飲む。
 大人数で馬鹿みたいに飲む酒も良いが、こんな酒の楽しみ方もあったとは考えもしなかった。
「ありがとう。テリ」
 横にいる彼は何も応えずにただ口角を上げ、月を見上げながら嬉しそうに一口だけ酒を呑む。

 どのくらい時間が経ったのだろうか。
「なあ……フェア」
 静かに酒を呑んでいたテリが声をかけてきた。
「なんだ?」
 その瞬間に持っていた空のコップを置き、振り向き様に私の両肩をがっしりと掴む。
 私は突然の事に驚き、テリの顔を見上げる……が、こちらを真剣な顔でじっと私を見ている。
 彼の瞳には沈みかけの月明かりに照らされた私の唖然とした間抜け面がはっきりと映り込んでいた。 
「好きだ。お前が……その……ずっと前からな」
 何を唐突に言っているんだ。この男は。
「飲み過ぎか? 少し落ち着け」
「俺は至って真剣だ。酔ってもいない」
 いつもの彼とは全く別人のようだ。威圧感が殆ど消えている。
「だがあれだけ……むぐっ」
 彼から少し距離を置こうと離れようとした瞬間、口が暖かいものに包まれる。
 そして私のマズルの隙間を縫って何かが入り、私の舌に絡み付く。
 咄嗟に閉じた目を開ける……眼前にはテリの顔があった。ああ……私はいま、彼に接吻されているのか。
 体の奥底で痺れるような感覚に襲われ、意図せずに声が洩れてしまう。
 数分は続いたのだろうか。岩場に座ったまま何時しかテリの方へと抱き寄せられていた。
 塞がれていた唇が解放され、新鮮な空気が肺に流れ込む。
「少し……俺の言葉を聞いてほしい」
 全身の力を吸い取られるようなキスだった。言葉を返す力すら湧かない。
「知り合って数ヶ月後くらい……お前が崖から落ちた時の事を覚えているか?」
 崖の向こうにいた誰かに呼ばれた気がした。吸い寄せられるように声がする方向へ……そして遥か下に流れていた川に落ちた。
 そこからどうやって助かったのか……覚えていない。気がついた時には病院のベッドの上にいた。
「まだシルやライもいない頃か。一人でお前を探しているうちに……気づいたんだよ。雄のお前を雄として好きなんだってな」
 あれからかなり時は経っているはず。
 ずっと、ただ少しエロに対してオープンなやつ……くらいに思っていた。
「わ、私に……」
 眼前のテリは未だ離れようとせずに、じっと私の目を見つめている。
 飛びかけた意識を無理矢理捕まえ声を捻り出す。
「私にとってテリ……お前は大切な仲間だ。そして……今の言葉が何よりも嬉しい」
 テリの後頭部に腕を回し自らの口元へ誘うと、体の奥で痺れていた何かが次第に火照りに変わってゆく。
 彼も私に応えるかのように、よりきつく私の体を抱きしめてくる。
 いつしか支えていた腕も力を失い、岩場の冷たさと硬さを背中に感じるようになった。

「なあ……フェア」
 耳元で名前を囁かれると体の火照りがより一層酷くなる。
「な……なんだ?」
 彼がやりたい事はなんとなく感づいていた……が、あえて聞いてみる。
「いいだろ? 辛抱ならないんだ」
 再び耳元で囁かれると同時に、テリの大きな手が股間へ充てがわれた。
 数回程度、女の経験こそあれど……同性にキス以上の事をされるのは初めてだ。当然不安もある。
「お前も興奮しているんだろ? なあ、フェア」
 耳がくすぐったい。耳元で囁かれるたびに理性が少しずつ溶け出してしまうような感覚だ。
 テリは私の股間を掌にある肉球を巧みに使い撫で回す。
 暫くご無沙汰だった慰み行為も手伝って、あっという間に恥ずかしい姿が露になってしまう。
「キスだけで興奮しているのか? 嬉しいねえ……布越しにでも分かるくらい涎が垂れてるしな!」
 わざと事細かに言っているのか? 普段の仕返しなのか?
「い、いちいち言わなくても……いい」
「普段は見せてくれないくらい恥ずかしがってるフェアも……たまんねえな」
 ぺろりと私の鼻の頭を舐め、大きな手で頭を撫でる。
 徐々に身に纏っていた衣服は乱れ、そしてその下にある体が露になってきた。 
「相変わらず……いい筋肉をしてるな」
 そう言いながら、人差し指で私の腹をつーっと撫でる。
「なあ……いいか?」
 何が「いいか」なのか分かった。私は何も言わずに視線を逸らしながら頷く。
 次の瞬間、ズボンに手がかかり……一気に引きずり下ろされた。
 外気に晒された私の全て。主張する私の雄が露になる。
「やっぱり……俺が思った通り長いな」
 肩で呼吸しながらテリの視線を浴びる。
 そしてテリは太いマズルを私の象徴に近づけ、すんすんとそこの匂いを嗅ぐ。
「ば、馬鹿か! くさいだろ……そんな場所」
「いや? お前のちんぽは臭くない。男らしい良い匂いだぞ?」
 まるで愛おしそうに匂いを嗅ぎ、先端の割れ目から溢れる汁を……
「ひぐぅ!」
 舌でぺろりと舐め上げる。久々の感覚に思わず子供のような声が出てしまった。
「見かけによらず可愛い声出して……どれ」
 テリは大きく口を開き、限界近くまで膨張した私の雄をぱくりとその口の中に咥え込んだ。
「おう……ふう……」
 くちゅくちゅと音が聞こえ、その方向をちらりと見れば大きな茶色の頭が私の一部を楽しそう耳をぴこぴこ動かしながら咥えている。
「て、テリ……凄い熱い……」
 熱を帯び、体がばらばらになってしまいそうなくらいの強い刺激が一点からやってくる。
 あと少し……もう少しで達してしまいそうな時だ。
「ああ、ひぐううう……あ、いっ……え?」
 出る直前で口を離され、行き場を失った快感が体を余計火照らせる。
「俺も……我慢できねえわ」
 テリはいそいそと服を脱ぎ、私とは対照的な脂の乗った茶色い腹を露にする。
 その垂れ気味の腹の下を見れば、先ほど飲んだ酒の瓶と遜色無いくらい太く大きな雄の象徴が外気に晒された。
 でっぷりと太ったその体にその性器は、心の底から舐めたい衝動に駆られてしまう。
「なあ、俺のも舐めてくれないか?」
 先ほどテリが言っていた言葉が分かった気がする。
「歯ぁ立てるなよ?」
 彼を意識すればするほど、匂いは甘美な興奮材料になっていた。
 テリの前に座り込み、彼の太い雄を咥え込む。すると彼は嬉しそうに腰を前後させ、快感を貪り食う。
「ああ……だんだん上手くなってきたな。凄い気持ちいいぞお前の口の中は」
 彼に悦んでもらえるようにと、嘔吐きながら太く長い彼の雄に奉仕する。
 限度を知らないと思うくらい硬さと太さを増し、次第に口の中に塩気が広がってくる。そろそろ達しそうなのだろうか?
「待て待て待て待て」
 なんとなく予想は出来た。粘液が口中にへばりつき、腰つきも強くなってきた所で一気にずるりと引き抜かれる。
 引き抜かれた後、吐きはしなかったが私は少し涙目になっていた。
「すまんすまん。フェアの舌使いであと少しでいってしまう所だった!」
「げほっ……げほっ」
 私は喉の奥まで犯された反動で、嘔吐きや咳が止まらず地面に四つん這いになっていた。
「きゅうん!」
 我ながら情けない声だ。四つん這いになり力なく垂れていた私の尻尾をテリがむずと掴み、ぺろりとめくりあげる。
 テリの眼前に晒された部分……菊門を彼はそっと指で撫でる。
「いいよな? 大丈夫だ。痛い思いはさせん」
 低音の効いたいい声に聞こえた……気がした。
「ああ、早くお前のちんぽを私の穴に入れてくれ……頼む」
 私は快楽の坩堝に堕ちてしまったようだ。これじゃあそこら辺に立っている雌と変わらない。
 後ろの方で卑しい笑い声が聞こえた気がした。
 それと同時に体の中に何かが入り込み、ゆっくりと蠢いている。
「まずは解さねえとな。そうしないと裂けちまうからな」
 太い彼の指がまるで本物のそれに近いくらい太く、体の中を縦横無尽に動く。
 私はただ無我夢中に……感じるがままに喘ぎ、涎を垂らし地面の色を変えているのだと思う。
 指の数を二本……三本と増やされ、最後はもう何本入っているかも分からないくらい飲まれていた。

 どれくらい時間が経ったのだろうか。
「そろそろ入れるぞ」
 きた。今やこの瞬間が待ち遠しかった。
 すっかり性感帯に変わってしまった菊門に、ぬるぬると濡れたテリの雄が充てがわれる。
 その棒はまるで火に包まれた棍棒のように熱く硬かった。
「よい……しょっと」
 痛みは殆ど無く、圧迫感とじわじわと感じる快感。時間をかけて解してくれたおかげなのだろうか?
 じわじわと下腹部を圧迫感が支配する。
「あと少しだから……我慢しろよ」
 気を使ってくれているのだろうか……徐々に私に飲み込まれてゆく暴力的に太く長いテリの肉棒。
 そして、尻臀にテリの体温と重みを感じた。
「全部入ったぞ……すごいな。本当に初めてなのか? フェアの中、このままでもいってしまいそうだ」
「はあ……はあ……ありが……とう」
 息を荒げながら辿々しく返事をするのが今の私には精一杯の事だ。
 菊門の周りがじんわりと熱を帯び、体内ではテリの肉棒がびくびくと動いているのが分かる。
「すまん、もう我慢できそうにない。ゆっくり動かすぞ。いいな?」
「あ、ああ……突いてくれよ」
 私の尻臀をぱちんと平手で叩き、ゆっくりと腰を引く。肉棒と同時に内臓ごと引きずり出されそうな感覚が全身を包み……
「おっし!!」
 彼の声と同時にまた腰を打ち付ける。その繰り返しだった。
 私も自然と嬌声がこぼれ、私の萎んだ肉棒からとろとろと透明な汁が溢れ、地面を濡らし水たまりを作る。
「おっしゃあ、体動かすぞ!」
「えっ……ひゃん!!」
 ずるりと彼の肉棒が引きずり出されると私の体を持ち上げ、岩場に仰向けで寝かせられた。
 再び挿入されるとテリは私に寄りかかり、体を抱きしめそのまま立ち上がった。
 四つん這いの時より深くテリの肉棒が刺さり、私の一番気持ちがいい所を擦る。
「いい顔してるじゃねえか! 大好きだぜ。その表情!」
 普段より少し乱暴な言葉も余計私の心を燃え上がらせた。
 彼の首に腕を回し、ピストン運動がより深くなるようにバランスを保つ。
「もっと……テリのちんぽ……ああ……気持ちいい」
「なかなか言うじゃないか! 普段じゃ聞けないような淫語のオンパレードじゃねえか!!」
 応えるかのように腰の動きが力強く、大砲のような衝撃が腰を打ち付けるたびに伝わってくる。
「嗚呼……いい! あっあっあっ! いきそう!」
「俺もい、いくぞ! 孕ませるくらい種つけてやるからな!」
 来る! テリの肉棒が次第に膨張していき、先ほどとは比べ物にならないくらい太く硬くなっている。
「ああ……いっぱい孕ませてくれよ! いぐううっ! つっ!」
「う、うお! いくぞおおお!」
 頭の中で火花が散る。まるで感電でもしたかのようだ。
 と同時に彼も大きく深く腰を打ち付け、私の腹の中でテリも弾ける。まるで強力な噴水が起こっているようだった。
 中に収まりきらなかった彼の精液が、きつきつだった筈の結合部から漏れ、白い水たまりが二人の足下に出来た。
 「いいか? 抜くぞ」
 テリの未だ硬い肉棒を、ずるりと抜き取ると同時に彼の精液も一緒に毛を伝う。
「なあフェア……今のお前、凄いいやらしいな……本当」
 すっかり脱力してしまった私は、再び岩場に寝かせられた。
 ふとテリの方を見ると、私を見ながら肉棒をいじっている。オナニーでもするつもりか?
「こ……来いよ。お前が満足するまで私を抱いてくれないか?」
 大きな図体の後ろにある小さな尻尾は今の言葉で千切れそうなくらいフルスイングしているのだろう。
「い、いいのか!?」
 予想外なのだろうか。嬉しそうにこちらに来て口を重ねる。
「ああ。私もお前の子種が欲しくなったんだ」
 既に広がり濡れている私の『雌穴』に、再び彼の肉棒が充てがわれ……
「きゅあん!」
 何度も何度も……腹が膨れるくらい子種を放ち、時間が許す限り何回も体を白く染めあげる。

 帰る頃には少し空が明るくなりかけていた。
「なあ、手……繋いで良いか?」
 頬を掻きながらテリが片手をふらふらさせている。
「い、今だけだからな。二人がいる時は普通にしていろよ?」
「分かったよ……俺とお前、二人きりの時はその分抱きつかせろよ」
 言葉にはしなかったが、繋いでいる手を強く握るとテリも強く握り返してきた。痛いくらいに。
 普段は無意識レベルで動くものだが……今晩は尻尾が痛い。
 宿に着くと、まだ誰も起きていない事を確認し、被毛にこびりついた二人の精液や汗を風呂場で洗い流しに行く。

 もちろん……二人一緒にお互いの体を洗い合うつもりだ。