辺りは闇…僕の前にはもう一人の僕…
「やぁ!僕が君にあげた力…分かった?」
「竜崎さんを治した…力?」
もう一人の僕はコクンと頷いた
「そう…魔法では出来ない力…それが君の力なんだ」
「魔法では出来ない力…か」
僕たちは以前あった長いソファーに腰掛けた
「力を思い通りにコントロール出来れば、君はもっと成長する…色んな意味でね」
「ねぇ…前に君が言ってた『君は僕であり、僕は君なんだよ』その意味、分かった気がする…」
「へぇ〜どんなのだと思う?」
「君は覚醒した時の僕…つまり能力が使っている時の僕…って事?」
「その通り、僕は君が現実で能力を使っている時の姿なんだ」
「でも…」
僕の頭に一つの疑問が浮かんだ…
「なんで、僕の前に現れたの?僕は二重人格者なの?」
もう一人の僕が首を横にふった
「ううん、違うよ。僕は君の隠された心が創った人…君にとっての無意識が創り出したのが僕…う〜ん上手く説明できないや」
「でも言いたい事は何となく分かった気がする…」
「もし、僕が現れなかったら…君は混乱するでしょ?突然、今まで無かった力が使えるなんてさ」
「まぁ…確かにそうかもね」
現実で竜崎さんの言った、力を使っている時の僕の目…透き通る様な青…
それが僕の中でもう一人の僕との繋がりが分かった時だったのかもしれない…
「そろそろ僕、消えるね?」
「え!?なんで?」
少しずつもう一人の僕の姿が薄れていく…
「本当に僕の事が必要になったら、また夢で逢えるし…そろそろ現実に帰った方がイイかもよ」
そう言うと彼の姿は完全に消え、僕の意識も薄れていった……
「おはよう」
目を開けると、目の前には竜崎さんの顔があった
「あれ?僕どうしたんですか?」
「いつの間にか寝てたぞ?」
いつの間にか僕は布団の上で寝かされていた…
「え!?あ…あれ?」
僕は少し頭の中が混乱しているようだ…
「どうした?なにかあったのか?」
心の中で状況を整理した…
さっきのは夢…今いるのは現実なんだ と
「いえ…ただ、もう一人の僕と話している夢を見たんです…変化があった時みたいな感じで…」
「そうか…どんな話しだ?」
僕は夢で話した事を全部話した…
『君は僕であり、僕は君なんだよ』…彼(もう一人の僕)の存在…
「なるほど…それは君と夢の君でしか分かり得ない事なのかもな…俺がどうこう言える事じゃないしな」
「…そうですね」
竜崎さんはスクッと立ち上がり
「熊木、朝食…用意したけど食べるか?」
「はい!」
リビングに移動すると、そこには
トーストとコーヒーが用意されていた
「こういうのでもイイか?」
「はい、こういうのも好きです。でも、昨日の夜とは量が違いますね?」
昨日に比べ…明らかに『普通の人の朝食』と言う感じだ
「ああ、俺は朝は少し、夜はガッツリ食べるタイプの人なんでな」
そう言いながら竜崎さんはトーストをかじった
「僕は、朝食べないでギリギリまで寝てた方がイイって人なんです…でも、こういうのもゆったりしててイイですね」
僕もトーストをかじった…今まで食べた物より美味しい気がする
「朝食べないと体力でないぞ?コレ、親父の口癖でな…よく言われたよ」
「そうなんですか」
僕は一口コーヒーを飲んでみる…
「このコーヒー…おいしい!」
「よかった、口に合って…実は俺のオリジナルなんだ。結構こだわりがあるんだよ」
そして…朝食を食べ終わった頃…
「熊木…大学はどうする?行きたいか?」
「大学ですか?」
竜崎さんはコクンと頷いた
「熊木が行きたかったら俺やMERGの人達がサポートする…それは獅島や藤間にも、俺が言った事と同じ事を言う様に奈々と和樹に言ってあるんだが…」
今まで通りに生活した方がイイのか…
それとも…
「僕は…行きたいです。卒業までもう少しですし、少しでも長く他の友達と想い出を作りたいんです…他の人に迷惑が掛かるのは分かるんですが…」
「…そうか」
すると竜崎さんは携帯電話を取り出し、どこかへ電話をかけ始めた
「もしもし俺だ…ああ……そうか…分かった、伝えておく…」
そして電話を切った…
「獅島も藤間も、熊木と同じ事を言ってたそうだ…よかったな、友達も同じ気持ちで」
「そうですか。ありがとうございます」
少し不安はあるけれど、二人とも同じ行きたいっていう気持ちは嬉しい
「今日は…平日だがどうする?」
「えぇ〜っと…今日は三人とも講義無いんで、会いたいと思います」
「そうか、じゃぁその間に熊木の荷物を、部屋に入れておく様に言っておくから」
竜崎さんは大学へ行く支度をし、家を出ようとしていた
「そうだ!熊木の声紋と指紋は、昨日のうちに登録しておいたから、いつでも出入りできるぞ」
「はい、ありがとうございます!」
そして竜崎さんは大学へ向かった…
暫くした頃、僕は二人に連絡を取り会う事にした
場所は大学近くのファーストフード店…
僕が一番先に着いたらしく、まだ二人は来ていない…
-数十分後-
「おまたせ〜!!」
二人は、ほぼ同時にやってきた
なんか、一日会わなかっただけなのに、もう何ヶ月も会ってない様な感覚になっている
「なんか、久しぶりな気がするね」
「せやね、色々あったからなァ」
考えてる事は、僕と変わらない様だ
「じゃぁ、立ち話も何だし、中に入ろう?」
「そうだね」
僕たちは、店の中に入り注文して席に着いた