… …… ……… 僕は…今何処にいるんだ?

「うっ…くっ!」

ジャリン…ガチャン

体を動かそうと左右に揺らしてみても、チェーンか何か金属の物で縛られているみたいで…動かない…

暗闇の中で微かに人影が動いているのが見える…

「だ…誰だ!?」

「ほぅ…気がついた様だな…」
「なぁ!解けよ!」
僕がもがく度に、金属がジャラジャラと音を立てている…

「そうはいかん…もうすぐ君の体に変化が訪れるんだ…縄を解くのは私たちにとって危険な事なんだ」

「変化?…危険?なにがだよ!!」
「あと数分もすれば、君自身が身を以て分かる…変化が終われば、私たちの正体を明かすよ」


ガバッ!!

「っ……」
言いようのないリアル感のある夢だった…
毎回夢に出てくる人とは、違った声…民族も分かった…多分、龍族…か?

「レグザー…」
”はい、宏太さん。如何致しましたか?”
「今、何時?」
”5月31日 金曜日 午前5時20分 です。”

まだそんな時間か…

”熊木 宏太さん、獅島 雫様からお電話です。”

「宏太…?」
「雫も…見た?」
「……うん」
「藤間から連絡は?」
「ない…」
「一時間後に僕の家に来て」
「うん、分かった」
”会話終了”

藤間から連絡が無い?念のため、電話してみるか…

「レグザー……藤間 蘭へ音声発信」
”かしこまりました。少々お待ちください”


……
………
…………出ない

「藤間 蘭への発信中止」
”かしこまりました”

いつもならスグに電話に出るのに…僕の心に一抹の不安が過った…



- 一時間後 外-

「お待たせっ!アレ?藤間は?」
「それが…何回か電話しても、出ないんだよ」

取り敢えず、僕と雫だけで部屋まで移動する事にした



-宏太の部屋-

「レグザー 着信はある?」
”いいえ、着信履歴はございません”

「ねぇねぇ…宏太の家にあるAI(人工知能)ってRX-6136K(レグザー)だったっけ?」
「この前買い替えたんだよ。前のは大分古い型だったし、声を認識しない事が多かったからね」
「そうかぁ〜。いいなぁ〜」

「そう言えば、藤間から電話来ないねぇ…」

いくら待っても藤間からの電話は無かった…

「きっと、二度寝しちゃったんだよ!学校に行けば居るんじゃない?」
「そうなのかなぁ〜?なんかイヤな予感がするんだよなぁ…」



-学校-

この日、僕と雫がいくら待っても、藤間は学校に来なかった…

「藤間の身に何かあったんじゃないかな?」
「宏太がそこまで言うなら…帰りに藤間の家に寄ってみる?」
「うん…」



-藤間 蘭の家の前-

「ごめんくださーい!」

…僕たちがいくら呼んでも、返事が無い……
家の中に人が居る気配が全く感じられない

「宏太…?」
「ん?どうした?」

キィーー…

「……ドア開いてる…」

ドアを開けた瞬間、僕たちの目の前に飛び込んできたのは…

泥棒にでも荒らされたかの様な光景だった!

僕は急いで藤間の部屋へと向かって走った
前に何度か来ているから、場所は分かる!

バンッ!!

藤間の部屋の扉を勢いよく開けても…そこには誰も居なく、ただ物が散乱した部屋だ…

「ど…どこ行ったんだろうね…」
「分からないよ…ちょっと待って!なんでこうなったか分かる手段はあるよ!」
「ん?」

僕は藤間の部屋にあるAIのスイッチを探し、電源を入れ起動させた

「一体何をするつもり?」
「僕の持ってるAIと同じシリーズだから…ちょっと見てて」

”ユーザー名前をどうぞ”
「ゲスト パスワードは…」

”ようこそゲストさん”
「この『ゲスト』だと、限定されてるけど、僕の使いたかった機能は使えるんだよ」
「?」

「カメラ動画の過去の映像リスト起動」
”かしこまりました”

「ん〜っと…あった!」
僕はリストの中から変な映像の映っている動画を見つけた

「これを再生」
”再生致します”

「ちょっと!アンタ一体なんや!?」
「黙れ!コッチに来い!!」
「イヤや!!」
ドスッ!
「うッ…」
ドサッ
「所定の場所へ運んでおきなさい」
”映像は以上です”

「な…なに?今の映像は?」
「わ…解らない…でも、それ以降の映像が無い…ってなると…」
その映像には、藤間が何者かの集団に襲われ、気絶させらた所までしか映っていなかった…

「あの人達は…だれ?」
「分からないよ…取り敢えず、戻ろう?」



-宏太 部屋の前-

僕たちは、謎を残しつつ藤間の部屋を後にして、再び僕の部屋のドアの前まで戻ってきた…

ピッ

”指紋認証不可 やり直してください”

「あれ〜?変だなぁ…」

ピッ

”指紋認証不可 やり直してください”

その後やり直しても、ドアロックは解除されない…

試しに僕は、画面のメニューの中から声紋認証のボタンを押した

”声紋認証 コードをどうぞ”
「熊木 宏太 ドアロック解除」

”解析中……声紋認証出来ませんでした”

「いつもと同じ様に言ってるんだけどなぁ〜…」

その時だった…
「宏太、静かに…誰か居る!」

「おい、この家だな」
「あぁ、間違いない」
「熊木…宏太 か…」

その声は…さっき藤間の部屋で見た動画にあった声の主だ…間違いない
顔は覆面か何かがしてあって、判別出来ない…

「まさか宏太も…」
「あり得るね…」
何処かに逃げようとしても、唯一の出口には奴らが居る…他に隠れる所も逃げる所も無い!

次第に足音が僕たちの方へと近づいてくる…そして…

「熊木 宏太と…それと、獅島 雫だな…」
彼らの手には、僕と雫の事が書かれている…と思われる紙を持っている…

戦うか…?少しでも相手にスキを出させるだけでいいから…
ふと横に居る雫を見てみる…彼も僕と同じ事を考えているように思えた
僕の方を向き、目を見てコクンと頷いた

「凍寒(とうかん)よ…我に力を!」
「明力(めいりょく)よ…我に宿れ!」

僕が奴らの足を凍らせ、雫が二人の目を眩ませるつもり…だったが

「無駄だ…俺たちには効かない」
あとわずかの距離で僕たちの魔法攻撃が届かない!?

「一体…お前ら何者だ!」

「……いずれ分かる…」

すると、彼らの方から僕たちの放った魔法攻撃よりも強力な魔法が返ってきた!

「ぐぁ!!」

………朧げな意識の中で彼らが何か言っている…

『この二人を藤間 蘭と同じ場所へ運んでおけ…後は俺に任せろ』