…暗闇の中

僕は相変わらず状況が掴めないでいる

声も出ず…もがく事も出来ない……誰か…助けて…


「っひゃぁ!!」

…またか…でも、今のはこれまでとの夢とは…ちがう

ふと外を見ると、まだ夜が明けきっていなかった

時計を見る…まだ5時前 か

「なんなんだよ…一体…ったく」



-学校-

結局明け方から、ずっと眠れる事の無いまま学校へ…

「おっはようっ!」
朝イチからかなり元気な虎族の女が話しかけてきた

「あ…藤間か…おはよう」
この『藤間 蘭』は近所に住んでいる。雫よりも付き合いは短いんだけど、なんでも話せる仲だったりする

「元気無いケド、一体どないしたん?」

「ん〜…実は雫にも話したんだけど…僕、最近変な夢を何回もみてるんだ」

「どんな夢?」

「辺りが暗い中、姿形が分からない人達に…」

「追われて銃かなにかで撃たれる所で起きる夢?」

「なんで知ってるんだよ!?『撃たれる』って事を」
雫には言っていない『撃たれる』部分を知ってる!?

「他にも『実験体の分際で手こずらせやがって!』って誰かが言うんやろ?」
夢の中の人物と一字一句違わないセリフ…

「うん…でもなんで…?まさかとは思うけど…」

「ウチも宏太と同じ夢見てると思うんやけど…どうなん?」
「どうって…じゃぁ、今朝の夢は?」

「ん〜っと…せやなぁ〜…確か、暗闇の中で、なにも出来ないウチが居るって言う夢やったんよ」

僕の見た夢と同じだ…

彼女はそんな僕の表情から読み取ったのか
「やっぱり宏太も同じ夢 見てるんやね」
「みたいだね」

「そういえば、雫も同じ事言ぅっとったケド…聞いてへんの?」

雫も僕と藤間と同じ事が起こってたなんて…
昨日話した時には、そんな事…一言も言ってなかったのに

「雫からその話、いつ聞いた?」
「えっ?確か…一昨日やったかなぁ…あまり覚えてへんケド」

「おっはよ〜どうしたの?二人で深刻な顔して」

「なぁ雫…昨日僕が夢の話したよね?」
「う…うん。したね」
一瞬にして雫の表情に変化があった

「今、藤間から聞いたんだけど…雫も同じ夢、見てるらしいじゃんか」
雫は一瞬、藤間を見る…

「ウ…ウチは、ホントの事を宏太に話したんよ?別にええやんか、昔からの付き合いやし…そんな隠し事せんと、素直に話しぃや」
「宏太…本当にごめん…オイラ…」

次第に涙ぐんできた雫は、言いかけのまま何処かへ走って行ってしまった…

「そういえば、この前ウチに話した時も…ちょっと言葉が詰まってたりしとったナァ」

「僕、ちょっと行ってくるよ」
「うん、その方がエエかもしれんなぁ…」



-学校の外-

「はぁはぁはぁはぁ……ちょ…ちょっと待ってよ!」
走っている雫を追いかけてはいるけど、向こうの方が足が速くて追いつかない…

その時だった…雫が止まった…そして僕の方を振り向いた…

彼の目から一筋の涙が頬を伝った…

「どうしたんだよ…急に出て行って」

「だって…さっきの宏太…怖かったんだもん」
「昨日僕が話した時、なんで雫は言わなかったんだよ…って思ったんだ…ゴメン」

二人の間に少しだけ沈黙した空気が流れてた…

「本当は昨日言いたかったんだけど、宏太の真剣な顔みたら…言い出せなくて…」
コイツは昔から自分の事を言うのが苦手だったのを忘れてた…

「だから……「僕の方こそゴメン」
雫が話しを遮る様に僕は謝った

「…えっ?」
「だから…その…僕はそういう気は無かったんだけど、雫が怒っている様に見えたんだったら…本当、ごめん…」

「もう大丈夫だよ。オイラの早とちり…って言えば変かもしれないけど、宏太がそういう気がなかったんだ って言うのは分かったから…本当に大丈夫!」
そういうと、涙を拭き、僕に微笑んでくれた



-宏太の部屋-

雫と藤間と僕だけが、僕の部屋にいる…
シーンとした部屋で…ただ僕らの呼吸する音と衣擦れの音だけが微かに聞こえるだけだ

「で?これからどうする?」
静まり返った室内で、雫が口を開いた

「どうする?って言われても…ねぇ〜…藤間…」

「そない言うたって、宏太が『取り敢えず家に集まろう』って言うたからやん!」

そして再び一同無言…

「じゃぁ、また夢をみたら…どこかで集まろう?」
「せやな!んじゃぁ、ウチ…これから用事あるさかい、帰るよ?」

そういうと藤間は少し焦り気味に帰って行った…

「さてと、雫はどうする?」
「う〜ん…久々に宏太の部屋に来るのは久々だから、ちょっと遊んで行ってイイかな?」
「そういえば…雫がうちに来るのって久々だよねぇ〜…勿論イイよ!」



-数時間後-

僕と雫は久々に二人きりの楽しい時間を過ごした
こういう気持ちになったのは、どれ位振りだろう…
雫をはじめ、友達と一緒に過ごすには…ここ最近だと、学校の建物の中だけだった気がする

時が経つにつれ、他の友達は『バイト』や『恋愛』の方へ向かって行ったんだよな…

藤間と雫が帰った後の部屋を片付けながら…そんな事を思っていた…