「うあぁ!」
次の瞬間、僕は思わずベッドから飛び起きていた…

ここは…僕の部屋…か? うん…そうだ間違いない
胸に撃たれた痕跡も痛みすら無い

「はぁはぁはぁ…はぁ…今日もまた同じ夢か…」
この数日の間、ほとんど同じ夢をみる…

誰かに追われて…同じセリフを聞き…そして同じ死に方…鮮明に覚えている
実験体って、なんの事だよ」そう言おうとして…殺されるタイミング
一体…なにを意味しているんだろう…この夢は…

”熊木宏太さん おはようございます。本日2XXX年5月26日の東都南エリアの最高気温は23度。天気は晴れ となっております”

壁掛けタイプの画面から、天気予報の情報だけが何事も無い様に流れている

「あぁ〜あ…朝から気分悪い夢見ちゃったな…」

簡単な朝食の準備をしつつ、僕は夢の事を考えている


朝食をすませ、出かける支度をし…家を出ようとした

”行ってらっしゃいませ。熊木宏太さん。良い一日をお過ごしください”
部屋の奥から機械の声だけが聞こえてきた。

「朝っぱらからヘンな夢みたから、そういう気分じゃないよ…」

ピッ

”指紋認証完了 ドアロック 致しました”


「おはよー…って宏太の顔色変だよ?なにか有ったん?」
隣の席に座っている獅子族の人が、僕の顔を見て話しかけてきた

「あぁ…雫か…うん…最近、ちょっと ね」
「昔からの付き合いなんだから、いつでもオイラに相談しろよ?」

コイツ(獅島 雫)とは小学校からの幼なじみ…だからお互いに相談したり、相談されたりしている

「まぁ、たいした事ないから大丈夫!」
ホントは「大丈夫!」じゃないんだけど…

やがて始業のチャイムが鳴り、講義が始まった

講義の途中…僕は次第に夢の中に入ってしまった


「この実験体は、もう使い物にならない…コイツを回収して、次の実験体を準備しろ」

僕は暗く冷たい袋に入れられ、誰かに引きずられ車内に投げ込まれた

体が…動かない!?手には生温い液体が纏わりついてる

僕は…死んだのか?

’こうた…宏太?宏太!’
誰?僕の名前を呼ぶのは…って雫!?

起き上がるとクラスの全員が僕の方を見ている…ちょっと恥ずかしい

「熊木、ここは寝る所じゃないぞ〜」
竜崎教授の注意に、全員が笑う…

「どうした?随分うなされていたケド?」
「なんでもないよ…ちょっと悪い夢見ただけ…」



-夕方-

「実は…僕、ここ最近、変な夢を見てるんだ」
学校を終え、僕と雫は大学から程近いファーストフード店に寄り、今まで僕の見た夢を話した

「なんか…ちょっと怖いね…何回も同じ夢を見てる って…オイラも…」
「ん?「オイラも…」って?」
「ううん…なんでもないよ」
二人の間に暫く沈黙の空気が流れる

「まぁ、夢は夢だから、気にしなくてイイんじゃない?」
「そうかなぁー…なんかヤな予感がするんだよね」

「考え過ぎだよ〜…たまに気分転換してみたら?そうしたら、そういう夢を見なくなるんじゃない?」

気分転換 か…なにしたらイイんだか…

「あ、宏太!オイラちょっと用事入った、先に帰るよ。じゃぁまた明日、学校で」
雫は携帯を見ながら帰って行った

「僕も帰ろう っと…」



-宏太 自宅-

ピッ

”指紋認証完了 ドアロック解除 致しました”

「ふぅー…」

ドサッ

僕は帰ってきたままの格好でベッドに倒れこみ、自然と眠りについてしまった

なんか…いつもと同じ生活なハズなのに、いつもより疲れた気がする

今日は普通の夢を見たいな…