「それで?竜崎さんとの暮らしってどうなの?」
客席に着くなり雫が僕に聞いてきた

「え?どういう事?」

「いやね?オイラや藤間が一緒の人は、割と年近いから話し合うんだけど…」
最後の方で雫は少し言葉を濁した…

「いや、今の所…年が離れて困った事は無いよ?ちょっとイロイロあったけど…」
フと昨日の夜の事件が頭の中を過った

「イロイロ って?なんかあったん?」
横から藤間が心配している様な目で僕を見てる

こんな場所で言っていいのかな…?

「じ…実は…昨日、竜崎さんが…組織の人間に…撃たれたんだ…」
二人だけに聞こえる様に僕は小声で話した

「はぁ!!!?」
すると突然二人は、同時に…周りの人に聞こえる位大きな声で驚いた

当然のごとく、僕たち周りの視線を集める事になる…

「ちょ…声デカイよ…」
「ご…ゴメン……」


「それで?一体…なんでそうなったの?」
雫が僕に聞いてきた

「いや…僕が一人で街中を散歩してたら…組織の一人に声を掛けられて…そしたら竜崎さんが後から走ってきて…」

僕は昨日あった事を全て二人に話した…
竜崎さんが撃たれて死にかけた事…僕が覚醒して竜崎さんの傷を治した事…夢でもう一人の僕にあった事…
全てを、ありのまま二人に話した

「せ…せやったんか…」

「それで?宏太の力って言うのは、傷を治す事…?」

「そうだと思う…だた…」
僕は夢でもう一人の僕が言った事が頭をよぎった

「だた『本当に僕の事が必要になったら』って言うのが引っかかるんだ…」

大した意味のない言葉とは思うけれど…

他にも言いたかった事がある…

そういう考えも離れない…

「別に深い意味は無いんじゃないのかな?」
雫が飲み物を飲みながら言っている…

やっぱり…考え過ぎ…なのかな?

「ところで…二人の生活はどう?」
少し重い空気…僕は話題を変えた

「鷲山さんは…結構普通の人って感じかな…部屋のセンスもイイしね」

「奈々さんもウチらと同じ感じやな…小物とかメッチャカワイイんよ♪」

なんか…楽しくやってそうでいいなぁ〜…



「お!熊木と鷲山じゃん!」
僕たちが話していると横から誰かが話しかけてきた

「え?」
僕がその方を向くと、そこには鳥族の人が立っている
「えっと…」
どこかで会った事はあるけれど…名前が思い出せない…

「まさか忘れてる?」

僕が「うん」と頷くと、彼は一瞬顔をしかめた

「酷いなぁー…ぼくだよ!中学の時一緒のクラスだった『飛田 雄大(とびた ゆうだい)』だよ!」
「あ〜〜ゴメンゴメン」
昔の事だったから、あの頃の事…少し忘れてた…
「じゃぁ…忘れてた罰として、なんか奢って?」

僕は言われるがままに、彼にジュースを奢る事になった…
まぁ…忘れてた僕が悪いんだけれど…

レジに並んでいる時、彼も一緒に来た
そこで雄大は僕に話しかけてきた

「熊木は今、何してるの?」
「今は…大学行ってるよ。雄大は?」
「ぼくは……バイト以外何もしてないや」
「そっか…どこのバイト行ってるの?」
「それはヒミツだよ♪」

”お待ちのお客様、こちらのレジへどうぞ”



買い物を済ませ、僕たちは再び雫と藤間の居る席に戻った

「飛田君か…懐かしいね〜…僕は別なクラスだったけど…」
雫は昔を思い出すかの様に呟いた…

「ありがとっ熊木♪」
買った物を持ちながら笑顔で僕たちの方へやってきた

"ピピピピピ"
雄大の方から携帯の着信音が聞こえてきた

「もしもし…はい…わかりました。スグ行きます」
"ピッ"
手短かに電話を済ませた雄大…

「悪ぃ!奢ってもらった矢先なんだけど…ぼく、用事が出来ちゃった!ごめんっ!」
申し訳なさそうに僕たちに手を合わせた…
「そうっか…じゃぁまた会う事があったら遊ぼうね」
「うん、その時は今日のお詫びに何かするよ!んじゃね〜」

そして雄大は急ぎ気味で僕達の居た店から、大きな翼を広げ飛び去って行った



その後、僕たちは別れ、それぞれの帰路を辿っていた
少しの間だったけれど、雫や藤間に会えた事で頭の中で溜め込んでいた事がスッキリした気がする

ただ、飛田が今どんな事をしているのか分らないけれど、また近いうちに会えそうな予感がした。